「はと急便。その4」「よろしいですか…?」 ふっと我にかえると 「はと急便」の男が 私に同意を求めていた。 すっかり意識が飛んでいた私は 「すみません。もう一度お願いします。」 と言った。 男は軽く咳ばらいをして、もう一度説明をしてくれた。 「鳩の夜間便は少々特殊なものですので、 お客様にはあるルールを守っていただかねばなりません。」 「ルール…?」 「そう、ルールです。まずひとつ。 夜中に必ず書いた手紙であること。 それは決して、悪意がこもったものではないこと。 そして、鳩が手紙を届けるあいだ 柔らかい煮豆を、鳩のために煮ておいて下さい。 夜じゅう飛び続ける鳩は、体力を非常に消耗します。 甘い、えんどう豆が望ましいでしょう。」 鳩が煮豆をつつく姿を想像して、 私は何だか奇妙な気持ちがしたが 「わかりました。守ります」 と言った。 「そうして、これは一番大事なことですが…」 「今からお話しすることは、決して口外なさらぬように…」 そういって男は、 声を潜めた。 |